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DBS手術5年経過を記念(?)して

小林和弘

2021年に出版された本会報にDBS手術後3.5年目の状態を投稿した。現時点で、DBS手術からちょうどまる5年経ったことから、本稿を書こうと思い立った(病気になって約16年経過)。5年目で改めて見直そうと思ったのは、「DBSの効果は5年しか持たない」という噂があったからである。私の手術を担当していた医師の方によると、私の術後の経過はうまくいっている方だそうだ。また、主治医が所属しているのと別の施設のリハビリ担当の理学療法士の方も、パーキン病患者でDBS手術をした方を何人も見ているが、患者としては良い状態(ほぼベスト)であると言っていただける。それが専門家から見た私の状態であり、ありがたいと思い、医師の方々をはじめ関係各位の努力には感謝している。

しかし、患者の身になると、DBS手術直後は、もっとうまく動けたのにという思いがあり、年々効果が低下している気がするので、DBS手術の効果は、この先何年もつのだろうかという不安がでてくる。特に手術直後は、それまで動かなかった体が、思っていたよりはるかにスムーズに動き出し、ゴルフもすることができた。その時の感動は忘れられない。現在はスィングのスタンスが取れない。足の安定性が悪く、クラブを振ると倒れそうになるため、ゴルフはあまりやっていない。

私の現状を表1に示す。大きな問題点は、歩行障害と言語障害である。歩行障害はすくみ足等で転ぶことである。3.5年目に報告した時にもこの問題を書いたが、それが悪化している。杖を使わないで家の中を歩くと1日に数回は転びそうになり、1週間に数回は転ぶ。具体的に、この1週間の例を思い出すと(杖を使っていなかった時では)、1回目は足から崩れた。立てかけてあった金属製の杖が支えとなり、それを曲げて体は助かった。もう1回は、コンセントを抜こうとして、ベッドの裏の狭い通路を入って行って、転んで膝に軽い擦り傷を作った。とにかく両手にものを持っていたり、杖を使っていなかったりすると転びやすい。この様なことが連続しているので、妻からは一人の外出はご法度の沙汰を受けている。ただ、リハビリを行っている施設は家と比べ広く、さらに、歩行車が準備されているので転ぶことはない。よって、私の動きへの評価もよいのかもしれない。

また、声が出ず会話がしにくい。言葉が鮮明でなく、会話が通じない。妻には何を言おうとしているかわからないとよく聞き返される。特に電話で人と話すと何度も聞き返される。これには、困った。言語障害はこの1年ほどで顕著になってきた気がする。現在、言語聴覚士について訓練を受けている。ゆっくり、大きな声で話せば現状でも立派に通じるよとは言っていただけるが、生来の早口のせいで、実際の会話でゆっくり話すことはなかなか難しい。

さて、言うまでもないが、DBS手術というのは脳の特定部位に電極を立て電圧を加えることができるようにする手術である。この処置が病気に有効に働くため、外部の回路から一定の交流電圧を脳に印加している。なぜ交流を印加しているのかというと、直流を印加すると脳の組織内部に分極が起こり、その結果、ある種の電気分解により組織がやられてしまうからだと私は勝手に理解している。ただ、この交流電圧は、MRI、心電図等の測定時にノイズとなる。このため、これらの撮影時にDBSの電源を切ることがある。

つい最近、DBSの電源を切った。変な体験であった。簡単にリポートする。まず、電源を切ると、すぐ何とも言えない、明らかに静電気が印加されているような感覚が襲ってくる。ついで、体が少しずつ動かなくなっていく。1-2分で、体全体が丸くなる。手もグーのように丸くなる。手は開かない。指は動かない。すぐに息ができるか確かめてみる。息はできる。特に苦しくない。すぐには、死ぬことがない事を理解。次いで声を出してみる。声は通常以上の音量できちんと出る。妻との会話は通常以上に成立する。しかし、体は硬直したままで動かない。特に振戦が強く出ることはない。動けないのであるから、DBSが通常通りに働いている現状と比べ明らかに悪い状態であった。こんな状態では、寝たきりになるしかなく、生きていくのが厳しいなと思った。ほんとうにDBS電圧の再印加で、元に戻るか不安であった。

実際は、電圧が再印加されると、最初に感じた静電気が体に印加されたような感覚とともに、1-2分で体が動くようになった。可逆性を持って元に戻ることを確認した。

つまらない教訓を言いたくはないが、DBS手術のおかげで体の状態がそれなりに収まっており、まだまだ、生きていけることを再確認した。電圧を切った状態が手術をしていない状態と等価なら、手術をしたことは、私にとって正解であったことも、改めて理解した。もう、電圧がかかっていない状態で、暮らしていくことはかなり厳しい。

でも、ゴルフはできない。そんな時、目に入ったのは、22年年末から23年年始に盛んに宣伝をしていた任天堂スイッチ「スポーツ」のゴルフゲームである。早速購入して、使ってみる。クラブは振れないが、その代わりにジョイスティックを振る。気に入って最近は毎日遊んでいる。

 表1   DBS手術から5年経過後の主な症状と感覚的な深刻度
感覚的深刻度主な症状
  大歩行障害(転ぶ、足が震える)(杖を使うと転倒確率は大幅に改善)(私自身、顕著な首下がりが見られており、前のめりに転びやすい。)(歩き出す前に、頭と体を伸ばしまっすぐにし、場合によっては両手を後ろで組んで胸を張って歩きだすと倒れにくい。この時、手に、特に両手に、何かを持つと特に倒れやすい。)
言語障害(ゆっくり、大きな声話すと改善する) 
普通動作の緩慢
軽微手が寝不足等の場合幾分硬直する
問題なし震え(振戦)はない、
問題なし薬を1日程度飲み忘れても、手術前の様に体が動かなくなることはない
その他字は書けない

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